医療トピックス
食と健康
医学博士とシェフ/ソムリエの健康レシピ
ハーブを使った美味しい料理にワインを添えて病気の予防
<全12回>
第5回テーマ:
アレルギー「花粉症」
- ハーブ:
- ネトル
- レシピ:
- ネトルーのティー、花粉症対策フルコースメニュー
- おすすめワイン:
- ノンアルコールワイン・シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)
ハーブなどを使った長期的な免疫療法も、重症の人や、薬の副作用を減らす目的の人にお勧め
2月に入り、九州ではスギ花粉の季節となります。年々増加の一途をたどっている花粉症。くしゃみ・鼻水・鼻詰まり・頭痛・目のかゆみ、不快な症状が長引くと、仕事や生活、勉学などに支障をきたしてしまいます。
花粉症(花粉によって起こるアレルギー性鼻炎)は、樹木や草花の花粉が目や鼻の粘膜に付着することで症状が現れます。原因物質(アレルゲン=抗原)として、春は、スギ、ヒノキなどの樹木からの花粉、秋は、イネ科(カモガヤ、ハルガヤ)やキク科(ブタクサ)などの草の花粉が代表的なものです。
花粉が飛散する時期に、くしゃみ、水溶性鼻水、鼻づまりが出現し、検査で好酸球増加を認め、血清における特異的IgE抗体検査が陽性であれば、まず間違いありません。治療はまず花粉への暴露を避けるようにします(マスク、メガネなど)。そして対症療法として症状を軽減させるために薬物を用います。
確かに薬による一時的な治療も花粉症対策の一つとして一般的ですが、ハーブなどを使った長期的な免疫療法も、重症の人や、薬の副作用を減らす目的の人にお勧めです。また体の免疫力(自然治癒力)を高めることは、生活習慣病(ガン、糖尿病、高血圧)の予防にも役立ち、長い人生を乗り切る上でも大変有用です。
春になると急に代謝が活発になるのでアレルギーを発症しやすくなります。春が訪れる前からメディカルハーブのネトルを集中的に摂取することは、春が来てもアレルギーや花粉症に悩まされないように予防する春季療法と呼ばれ、ドイツやフランスでは日常生活に取り入れられています。
今回ご紹介するメディカルハーブの中のネトルは、ケイ素や鉄分が多く含まれているほか、花粉症やアトピーなどのアレルギー疾患、痛風などの浄血や体質改善として利用されます。
アレルギー疾患、浄血や体質改善として利用されるハーブ:ネトル
- 学名
- Urtica dioica(ウルティカ ディオイカ)
- 和名
- セイヨウイラクサ
- 科名
- イラクサ科
- 使用部位
- 葉部
- 花の色
- 淡桃色
- 主要成分
- フラボノイド(クエルセチン)、フラボノイド配糖体(ルチン)、クロロフィル、フィトステロール(β-シトステロールなど)、β-カロチン、ビタミンC、葉酸、ミネラル(ケイ素、カルシウム、カリウム、鉄)
- 作用
- 利尿、浄血
- 適応
- 花粉症やアトピーなどのアレルギー疾患、痛風、リウマチ
TIPS
ネトルには血行促進効果があり、ケガの早期回復やリウマチ、痛風、関節炎などにも有効といわれています。ビタミンや鉄分が豊富に含まれていることから、貧血の予防にも効果があります。また、カリウムも含まれているので利尿作用があり、老廃物をどんどん外に出します。血液を増やし、その汚れを浄化します。
さらに、ネトルに含まれている抗ヒスタミン成分には、喘息や花粉症などのアレルギー症状を和らげる効果があるといわれています。花粉症にお悩みの方は、ネトルのハーブティーを試してみましょう。
ネトルの安全性について
適切に使用する場合、クラス1に分類されます。
花粉症対策メニュー
花粉症を食事で完全に治すことは難しいですが、症状を和らげることは可能です。実際に、花粉症に良いとされる様々な食材の研究が進んでいます。
花粉症に有効な成分を持つメディカルハーブ
- エルダーフラワー
- 抗アレルギー作用で症状の緩和を助けます。
- カリフラワー
- 花粉症症状を和らげるαリポ酸やαリノレン酸が多く含まれています。
- ネトル
- アレルギー体質の改善目的で用いられます。
- ペパーミント
- さわやかな香りの成分であるメントールが含まれているため、蒸気吸入がおすすめで、鼻づまりをすっきりと解消します。
花粉症に良いとされる春の食材
- 玉葱
- ポリフェノールの一種である、ケルセチンを含んでおり、花粉症の改善に十分な効果を発揮してくれます。
- カリフラワー
- 花粉症症状を和らげるαリポ酸やαリノレン酸が多く含まれています。
- 椎茸
- 粘膜を強くしてくれるβグルカンによって免疫力を高める効果があるとされています。
- 春キャベツ
- 春キャベツのビタミンCは通常のキャベツの約1.3倍、カロテンに至っては通常の約3倍も多く含まれています。キャベツに含まれるイソチオシアネートには、がんなど異常細胞の増殖を防ぐ効果があり、これにより花粉に対するアレルギー反応も抑えてくれます。このイソチオシアネートは野菜の中ではキャベツにもっとも多く含まれています。また、キャベツを食べたときに感じるほのかな苦み成分グルコシノレートは解毒作用が強力で、がん予防だけでなく花粉症などのアレルギー疾患を抑える効果があります。さらにキャベツに含まれるルテインという成分には目の粘膜を強化する効果があるので、花粉症の季節に起こる深刻な目の痒みにも効くそうです。
- ブロッコリー
- 花粉症症状を和らげるとされるαリポ酸やαリノレン酸が多く含まれています。
- 鰆(青魚)
- 青魚に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)・DHA(ドコサヘキサエン酸)などの脂肪酸は、免疫機能を正常化し、アレルギー症状を緩和する働きがあるといわれています。
- 苺
- イチゴの成分である「GAPDH」という酵素が、アレルギーの引き金となる物質「IgE抗体」を減少させていることがわかりました。
- 黒酢
- 黒酢の良質なアミノ酸には粘膜や粘液を正常に保ち、免疫力を高める効果があるとされています。
- 赤ワイン(ノンアルコールに限る)
- 赤ワインにはポリフェノールが含まれていて、花粉症の原因(ヒスタミン)を抑えます。さらに粘膜が炎症を起こした時に出る活性酸素を抑え、炎症が悪化するのを抑えます。しかし赤ワインのアルコールは腸の免疫抑制効果を邪魔して花粉症を悪化させます。アルコールが炎症時に出る活性酸素の量を増やし炎症がひどくなるからです。このため効果を期待できるのはノンアルコールに限定されます。料理に使う赤ワインも火を入れてアルコール分を完全にとばして使用するようにしましょう。
ネトルを使ったおすすめのレシピ
ネトルのティー
作り方:
- 細かくしたネトルを熱湯で3分間抽出し、茶こしを使ってカップに注ぎます。
花粉症対策フルコースメニュー
I. H.O.V(前菜):シーフードのマリネサラダ仕立て、黒酢ドレッシング
作り方
- 車海老、ムール貝、ホタテ貝、ホタル烏賊を、白ワインを入れた鍋でポッシェ(蒸す)します。ポッシェした煮汁を軽く煮詰め、冷しておきます。
- 火を入れた、車海老、ムール貝、ホタテ貝、ホタル烏賊に温かいうちに、塩、胡椒を加えオリーブオイルでマリネして、味を馴染ませておきます。
- 皿にベビーリーフをおき、マリネした車海老、ムール貝、ホタテ貝、ホタル烏賊をのせ、トレヴィス、アンディーブ、ラディッシュ・エディフルフラワーを飾り、黒酢ドレッシングをかけ仕上げます。
黒酢ドレッシングの作り方
- 新玉葱をみじん切りにし、黒酢、砂糖、醤油と合わせ、オリーブオイルを少しずつ垂らしながら、かき混ぜて分離しないようにつないでいきます。
シェフからのアドバイス
- 車海老、ムール貝、ホタテ貝、ホタル烏賊は温かいうちが、味が馴染みやすいので、温かいうちに下味をつけましょう。
- マリネする時は、塩、胡椒よりもオリーブオイルを先にしてしまうと、オイルが食材に膜をはり、味が入りにくい為、必ず塩、胡椒、オリーブオイルの順で下味をつけるようにしてください。
- ドレッシングを作る時のオリーブオイルを垂らすのには、先の細いメジャーカップや横レードルを使うといいでしょう。
- 仕上げのドレッシングをかける時、いっきにかけると野菜がしんなりして、サラダの立体感が出ないので、少しずつやさしくかけるのがおすすめです。
II. Soupe (スープ):春キャベツのポタージュスープ
作り方
- バターで玉葱を炒め、しんなりして甘味が出たらジャガイモのスライス入れ、ジャガイモの周りが透明になってきたら、春キャベツを入れ軽く炒め、塩を加えブイヨンを入れ沸騰させ、出てきたアクを丁寧に取り除きます。
- ジャガイモに火が入ったらミキサーにかけ裏濾しします。再び火にかけ生クリーム、塩を入れて味を整えます。
シェフからのアドバイス
- バターは焦げやすく、焦げてしまうとスープに色がうつるため、最初は強火で後からは中火で野菜に火を入れるようにしましょう。
- ジャガイモは炒めているうちに周りのふちが半透明になるくらいが目安です。それ以上炒めてしまうと、ジャガイモのデンプン質が抜け出し、重たいスープに仕上がってしまいます。ジャガイモの火入れがポイントです。
III. Poisson(お魚):鰆のミ・キュイ、カリフラワーのヴルーテと共に
鰆のミ・キュイの作り方
- 鰆を分量の酸性水、塩、グラニュー糖、エルダーフラワーを合わせた液体に1時間程漬けこみ、引き揚げ水気をよく拭き取り、オリーブオイルと共に真空にします(真空のかわりにジップロックで代用可)。
- 40℃のお湯で1時間加熱し、氷水に取りよく冷やします。
- 皿にカリフラワーのブルーテを敷き、鰆をのせ、オリーブオイルを回しかけて仕上げます。
シェフからのアドバイス
- ポワローのかわりに玉葱、フォン・ド・ヴォライユの変わりにブイヨンでも美味しくつくれます。
- カリフラワーを茹でる時に牛乳、または薄力粉を溶いた水で茹でるとカリフラワーがより白く仕上がります。
- 鰆は低温で火を入れるため、菌が発生しないように、ジップロックを使う際は殺菌し、加熱した際は必ず氷水で素早く完全に冷ますようにしましょう。
カリフラワーのヴルーテの作り方
- カリフラワーは小房に分けて洗い、茹でておきます。
- ポアローは薄切りにしておきます。
- バターでポアローに色をつけないように炒めます。さらに薄力粉を加え、色づかないように炒めます。
- フォン・ド・ヴォライユを加えて沸騰させ、アクをとった後にカリフラワーを加え、軽く沸いている状態で30分ほど煮込みます。
- ミキサーにかけて、目の細かいもので濾します
- 生クリームを加え、塩、胡椒で味を整えます。
IV. Viande(お肉):熊本和王三角バラ肉のグリエ、赤ワインソース
作り方
- 仔牛の骨とスジを色付くまでオーブンで焼き、にんにくを横半分にカットし、オーブンで焼く、野菜を3 cm角にカットしフライパンで色付くまで炒めます。
- 鍋に仔牛の骨とスジを入れ、水を入れ沸かし浮いてくるアクを丁寧に取り除きます。
- 次に野菜、と残りの材料をすべて入れ、6時間煮込みます。その時浮いてくるアクを丁寧に取り除くようにします。
- その後はブイヨンをつくるときと同様で、ミジョテの状態で6時間煮込みます。途中煮詰まってくるので様子を見ながら水を足します。6時間後ネル(なければサラシ)を使いレードルで丁寧に濾します。
シェフからのアドバイス
- 仔牛の骨、スジ、野菜の焼き色は、フォンの状態をどう仕上げたいかにもよりますが、焼き色を強めにするとより茶褐色の強い色のフォンに仕上がるので、好みにより変えても良いでしょう。
- 野菜を加える前に骨とスジの浮いてくる余分な脂やアクを丁寧に取り除くことで、よりクリアーなフォンに仕上がります。
V. Dessert (デザート):苺のブラマンジェ、ペパーミント添え
作り方
- 鍋に牛乳とグラニュー糖を入れ沸かし、少し温度を下げ、もどしたゼラチンを入れ溶かします。
- 氷水を当てて冷やし、粗熱がとれたら、クレーム・ド・ストロベリー(苺のリキュール)ミキサーにかけた苺を加え、とろみがつくまで混ぜながら冷していきます。
- 生クリームを6分立てに泡立てて生地を合わせプリンカップに流し入れ、冷蔵庫で冷やし固めます。
- 固まったら皿に抜き、ミントを飾り仕上げます。
シェフからのアドバイス
- ゼラチンを溶かす時の温度は、50~60℃位です。溶かす温度が高すぎると固まる力が弱くなり、ゼラチン臭がきつくなるので牛乳の温度に注意が必要です。
- 牛乳を冷やす時、牛乳が熱いうちにリキュールを加えると香りがとんでしまうので、必ず粗熱をとってから加えるようにします。
- 生地を合わせる際に、とろみのついた方に少し加えてよく混ぜてから、生クリームのほうに戻し入れます。ゼラチン液は生クリームと同じ固さになるまで冷やすことで生地どうしが馴染み混ざり合わせやすくなり、分離することがなくきれいな仕上がりとなります。
- 板ゼラチンは重ねたまま水でもどすとくっついてしまうので、1枚ずつたっぷりの冷水に入れるようにしましょう。
VI. Pain (パン):ネトルを練りこんだ自家製パン
作り方
- パン用ミキシングマシーンに、ふるっておいた強力粉と、プリマリエベ、ドライイースト、塩、砂糖、ネトルを入れ良く撹拌し材料を馴染ませます。
- 次に良く冷やしておいた水素水、玉子を入れ低速回転で1分撹拌し、バター、サラダ油を入れ、中速回転で14分撹拌します。
- ボールに取り、35~37℃の温蔵庫で発酵させます。
- 倍位に膨らんだら中のガスを抜き40gずつカットし生地を丸めます。
- バットに並べ表面にナイフで切れ目を入れ35~37℃の温蔵庫でさらに発酵させます(ベンチタイム)。
- 倍位に膨らんだら、190℃、蒸気10%に設定したコンべクションオーブンで15分焼き上げます。
シェフからのアドバイス
- パンの生地をこねる際に、熱をもち温まってきて生地がだれるのを防ぐため、水はよく冷やしておくのがポイントです。
- 生地が発酵した際中のガスを抜き、再発酵させること(ベンチタイムと呼んでいる)でより引きのあるパン生地に仕上がります。
VII. Thé (ティー):エルダーフラワーのティー
作り方
- 細かくしたラズベリーリーフを熱湯で3分間抽出し、茶こしを使ってカップに注ぎます。
この料理にはこのワインがおすすめ
有機JAS認証
ノンアルコールワイン・シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)
- 銘柄
- 有機JAS認証 ノンアルコールワイン・シュペートブルグンダー
- タイプ
- 赤
- 品種
- シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)
- 原産国
- ドイツ、ラインガウ
- 造り手
- ツォルベリッヒ
長い歴史を誇るワイナリー「ツォルベリッヒ」で収穫されたワイン用葡萄を使って作られた葡萄ジュースは、アルコール発酵さえさせませんが、それはまさに“ノンアルコールワイン”と呼ぶにふさわしい複雑な香りと上品な味わいを備えています。この葡萄ジュースは、ドイツでは「トラウベンザフト」と呼ばれ、お子様を含め多くの方が、 ワイン代わりにお食事と一緒に親しまれています。 ワインのように、ヴィンテージごとに 異なる表情豊かな風味の違いを楽しめるのも魅力のひとつです。300周年を超える、長年培われた土作りによる有機葡萄の美味しさをお楽しみください。 シュペートブルグンダーは圧倒的に白ワインが多いドイツにおいて高級赤ワイン用品種として唯一作られており、フランスでは「ピノ・ノワール」という名で知られる世界的に有名な葡萄品種。ドイツ屈指のワイン産地であるラインガウで栽培されています。